湯沢産の漆で塗る

自分で掻いた湯沢産の漆をつかう

「自分で掻いた漆でお椀を塗ってみたい」 
つくり手として、そうした衝動に駆られ、地元湯沢産の漆を集め始めました。朝、太陽が昇って気温が上がると、木は水分を枝や葉の方に集めて蒸発をさせようとします。高温から身を守るためです。漆の木は、その自然現象によって漆液の出が悪くなります。そのため、まだ涼しい早朝、地元にある漆の木の栽培地へ出かけ、毎日少しずつ掻いて漆を集めました。こうして集めた湯沢産の漆だけをつかって、塗り仕上げたのが、この湯沢産漆の器です。
 この湯沢産漆のお椀には木と漆以外の原材料を使用していません。通常の漆製品で使われる砥粉・糊、珪藻土を炭化した地ノ粉や、朱や黒の顔料などを一切使わずに、漆だけを塗り重ねては硬化乾燥をし、研磨を繰り返してつくりました。お椀はこの工程を繰り返すこと十回。お箸も同じように塗り仕上げました。箸先も通常は漆を粉末にした乾漆粉を使うところを、秋田県能代市産の珪藻土を炭化した粉を、秋田県湯沢市産の漆で接着し、その上に湯沢市産漆を塗り重ねています。

 



秋田県湯沢市産生漆
  1回目(%) 2回目(%) 平均(%)
ウルシオール 73.3 73.6 73.4
ゴム質 4.9 5.2 5.0
含窒素物 2.3 2.1 2.2
揮発分(水など) 17.7 17.7 17.7
他の漆のデータ
  日本産(%) 中国産(%)
ウルシオール 67.29 59.97
ゴム質 5.43 6.71
含窒素物 1.86 2.24
揮発分(水など) 20.47 27.92


乾燥時間(20℃80%)
  指触乾燥 完全乾燥
  7.2h 10.3h
20℃70%24h以上で乾燥しなかった 湯沢産漆 中国産漆
ヘーズ(曇り度)20℃80% 56.19 49
全光線透過量(20℃80%) 15.61 41.8





湯沢産漆の所感について(有限会社田島漆店 田嶋秀起氏)

1.特徴的なのは弊社で扱った日本産の中でも非常に主成分(揮発分を除いた成分) が高い。通常はだいたい74%から78%ぐらいであるが、本品は82.3%もあった。

2.生漆では硬化に時間がかかる傾向にあるが、精製したものは通常の漆と同程度の20日前後で爪が立たない程の堅牢な状態となる。また、透明度も非常に高い。

3.純度が高く、硬化に時間がかかる為、量が必要とされる「下地漆」や短い乾燥時間を要求される「拭き漆」には不向きであるが、色物の艶消の「上塗漆」や使い込む事で艶が増す「呂色漆」には最適である。

4.湯沢産漆は日本の漆器本来の丈夫さ、上品さを実現すると共に、これまでよりも明るい色味の表現も可能となる為、漆器の新たな可能性を感じさせます。

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